ブロックチェーンの仕組みを理解しようとする際に、「コンセンサスアルゴリズム」という言葉をよく目にすると思います。
本記事では、ブロックチェーンの重要な仕組みである「コンセンサスアルゴリズム」を、それぞれ比較しつつわかりやすく解説します!
以下、本記事の要点です。
- 「コンセンサスアルゴリズム」は「合意方法」
- どのコンセンサスアルゴリズムを採用するかは各ブロックチェーンごとに違う
- PoWはマイニングによって成り立つ
- PoSでは通貨の保有量が多いほどブロックを生成できる確率が高まる
- PoIでは通貨に対する保有者の「重要度」をスコアリングしその結果をもとにブロック生成者を決める
- PoCではバリデーターの80%以上がトランザクションを承認すれば取引ができるようになる
コンセンサスアルゴリズムとは?
「コンセンサスアルゴリズム」は、日本語で簡単に言うと「合意方法」となります。
ブロックを追加する際のルールとなるコンセンサス(合意)形成を行うアルゴリズム(方法)のことです。
言い換えれば、データの真正性を担保するルールとも言えます。
ブロックチェーンは、取引内容をひとかたまりのブロックにまとめ、暗号化した上でブロックチェーンの最後尾につなげていく、という作業が行われることで成り立っています。
この作業を行うことで暗号資産やNFTなどの取引の正しさが保障されます。
このブロックを生成する際にどのようなコンセンサスアルゴリズムを使用するかは、各ブロックチェーンごとに変わってきます。
選択するコンセンサスアルゴリズムが、各ブロックチェーンの思想や特徴を表しているとも言えるのです。
コンセンサスアルゴリズムには、主に下記の4つがあります。
- PoW(プルーフ・オブ・ワーク)
- PoS(プルーフ・オブ・ステーク)
- PoI(プルーフ・オブ・インポータンス)
- PoC(プルーフ・オブ・コンセンサス)
それぞれについて、もう少し詳しくご紹介します。
PoW(プルーフ・オブ・ワーク)
「PoW(Proof of Work、プルーフ・オブ・ワーク)」は、世界初の暗号資産であるビットコイン(BTC)に使われているコンセンサスアルゴリズムです。
ほかの多くのアルトコイン(ビットコイン以外の暗号資産)でも用いられています。
PoWでブロックを生成するには、たった1つの「ナンス(nonce)値(「一度だけ使われる数」という意味の言葉。 主に暗号通信などで用いられる使い捨ての32ビットの値)」を探して、膨大な試行錯誤を繰り返さなくてはなりません。
ビットコインの「マイニング(Mining)」という作業では、世界中のマイナー(採掘者)たちが高い計算能力を持つコンピュータを使い、ナンス値を探して、膨大な試行錯誤を繰り返す競争となっています。
この競争で最も早く正解のナンス値を見つけた人がブロック生成の権利を得ます。
PoWではこの競争で大量の高性能コンピュータを使うため、電力消費が多く、地球環境への悪影響も指摘されています。
さらに、大資本を有する組織だけが事実上大規模なマイニング体制を整えられるため、マイナーの固定化とマイニングの中央集権化を招いているという面もあります。
一方、このマイニングにはコストがかかるため、暗号資産の価格を保ちやすい・向上させやすいとも言えます。
ビットコイン以外でPoWを導入している暗号資産には、下記などがあります。
- ビットコインキャッシュ(BCH)
- ライトコイン(LTC)
- イーサリアムクラシック(ETC)
- モナコイン(MONA)
PoS(プルーフ・オブ・ステーク)
「PoS(Proof of Stake、プルーフ・オブ・ステーク)」は、誰がブロックを生成するかはランダムに決定されるものの、通貨の保有量が多いほどブロックを生成できる確率が高まるコンセンサスアルゴリズムです。
ビットコインの運営から見えてきたPoWの問題点を解決しようとしているのがPoSです。
ビットコインの次に有名なイーサリアムは、もともとPoWを採用していたものの、PoSに切り替えました。
PoSはPoWとは異なり、計算能力を使った競争が発生しません。
そのため、ブロック生成作業のハードルが低く、必要な機材をそろえれば個人レベルでも実践することができるとされます。
同時に膨大な電力も不要なため環境に優しく、承認スピードも速いという特徴があります。
一方、PoSでは多くの暗号資産を長期間にわたって保有する方が有利なので、通貨の流動性が落ちやすいという面もあります。
イーサリアム以外でPoSを導入している暗号資産には、下記などがあります。
- カルダノ(ADA)
- アトム(ATOM)
- テゾス(XTZ)
また、PoSの進化型とも言えるコンセンサスアルゴリズムにDPoS(Delegate Proof of Stake、デリゲート・プルーフ・オブ・ステーク)があります。
DPoSでは、PoSのように単純に通貨保有量の多い人が優先されるのではなく、通貨保有量の多い人が優先される投票を行います。
その投票により、ブロック生成者が決まります。
DPoSはリスク(LSK)などで導入されています。
PoI(プルーフ・オブ・インポータンス)
「PoI(Proof of Importance、プルーフ・オブ・インポータンス)」は、流動性が落ちやすいPoSの発展型ともいえる方式です。
PoIでは、保有量に加えて取引回数や取引量など、いくつかの指標からその通貨に対する保有者の「重要度」をスコアリングし、その結果をもとにブロック生成者を決める方式となっています。
PoIはコンセンサスアルゴリズムとしてはとても珍しく、暗号資産ネム(XEM)が唯一の採用例とされています。
保有者が通貨にとって有益で重要な存在なのかどうか、いくつもの視点からチェックされるため、PoSほど流動性が落ちる可能性は低いようです。
なお、ネムでは取引承認・ブロック生成の作業をマイニングではなく、ハーベスト(収穫)と呼んでいます。
PoC(プルーフ・オブ・コンセンサス)
「PoC(Proof of Consensus、プルーフ・オブ・コンセンサス)」では、取引の承認作業を行うバリデーターと呼ばれる特別なノード(ネットワークの接点)が承認作業をします。
バリデーターの80%以上がトランザクションを承認すれば、取引ができるようになります。
この点が、条件さえ満たせば誰でも取引の承認に関与できるコンセンサスアルゴリズムであるPoW、PoS、PoIはと異なっています。
バリデーター同士が承認者として認め合うことによってネットワークが形成されているので、悪意のあるバリデーターによる不正行為を防ぐことができます。
さらに、限られたバリデーターが承認作業を担当するため、処理スピードが速いというメリットもあります。
ただ、管理する側が不正を行ってもそれを見抜くことができないという、中央集権的な問題もあります。
PoCを導入している暗号資産には、送金の速さもあって国際送金システムとして利用されるリップル(XRP)などがあります。
まとめ
- 「コンセンサスアルゴリズム」は「合意方法」
- どのコンセンサスアルゴリズムを採用するかは各ブロックチェーンごとに違う
- PoWはマイニングによって成り立つ
- PoSでは通貨の保有量が多いほどブロックを生成できる確率が高まる
- PoIでは通貨に対する保有者の「重要度」をスコアリングしその結果をもとにブロック生成者を決める
- PoCではバリデーターの80%以上がトランザクションを承認すれば取引ができるようになる